ミュージアムのひととき

第9回 Manō (マノ)

<写真1:Planet Shark 開催中のキャッスル館 >

Manō(マノ)はハワイ語で鮫を意味します。今回は鮫についてのお話です。 

 Planet Shark:キャッスル館で201695日まで開催>

            Bishop Museumはアメリカの博物館として初めて「プラネット・シャーク」という鮫に関する展示を2016611日にキャッスル館でオープンしました。5年以上の年月をかけて鮫の専門家や水族館、海洋撮影技術者と博物館の展示クリエイターが共同制作した「プラネット・シャーク」は海水に濡れることなく不思議な鮫の世界へ観客を誘います。

   鮫と聞けば恐怖を感じる方が多いでしょう。またミステリアスな魅力を感じる方もいるかもしれません。鮫の生存は恐竜より古く、約45千万年前から生存していると言われ、海中では食物連鎖のトップとして海洋動物の生態系均衡に大きな役割を果たしています。400以上にも及ぶ種類の鮫がこの地球の海に生存し、ここ50年の間には大量の捕獲によって生存数が激減して絶滅の危機に瀕する種類もあると言われています。「プラネット・シャーク」では鮫に関する様々な展示を通して鮫を恐怖の動物としてではなく、この地球に共存する仲間として鮫について学び、そしてフカヒレをはじめとする商業目的での捕獲の現状を見直そうと呼びかけています。

「プラネット・シャーク」のみどころ

  • 最新のSENSORY4™テクノロジーを駆使した映像が巨大スクリーンに映し出され、リアルで迫力ある実写はまるで海の中で鮫を間近に見ているようです。
  • 最古で37千万年前の鮫に関する化石や本物の顎、一匹の鮫から抜け落ちた歯のコレクション。珍しいところではCoprolite と呼ばれる糞の化石もあります。
  • 鮫の檻や、海洋研究者が着用するダイビングスーツなど実用品の展示。ダイビングスーツはサンプルを手に取ることができるので、鮫の歯から人間を守るスーツの素材を実感できます。
  • 代表的な鮫の種類の説明では鮫の大きさや特徴、生息地域がわかります。
  • 危険な種類の鮫が活動する夜や早朝の時間帯、また鮫は少量の血でも大変敏感に嗅ぎつけることから少しでも出血していたら入水を避けるといった鮫とのコンタクトを避ける10注意点を展示しています。
  • フカヒレやコラーゲンといった商業目的の乱獲についての統計から捕獲に対する警告を呼びかけています。
  • アメリカでは年間に約100がハチに刺され、また約450人がベッドからの転落で命を落としている、他にもココナッツの実の落下やクラゲに刺されたことによって人が亡くなる意外な原因に対し、鮫の攻撃によって命を失う人は年平均で?人、といったデータの展示があります。?人の答えは「プラネット・シャーク」展示会場でご確認下さい。

 

<ハワイアンホールの Manōに関する常設展示>

<写真2:Niuhi:タイガーシャーク。ハワイアンホールの展示>

2009年にカリフォルニアの Academy Studios で制作されたもの。

タイガーシャーク(ハワイ語でniuhi:ニウヒ)はハワイの四大神のひとつ Kū (クー)のkino lau (キノラウ:この世での姿、化身)であり、また一族によっては ʻaumakua(アウマクア:家族の守護神、亡くなった先祖が変化した姿)であると言われている。ハワイアンホールにあるこのモデルは18フィート(約6メートル)あり、成長したオスのタイガーシャークはこれとほぼ同じ大きさ。

1908年ハワイアンホールに展示するためにオアフ島モアナルアで育ったコアの木でSamuel Kipi が作り始め、William Nahi 1912年に仕上げた双胴船。同年、Samuel M. Damon からBishop Museumに寄贈される。その後Milton Jr. Coleman によって制作された縄(ロープ)を使いSolomon Apio 2008年から2009年にかけて修復している。

「カヌーに乗るひとりひとりの安全と命がかかっているので、ロープは神聖なものであった。ロープはカヌーをしっかりと繋ぐものである。」(Milton Jr. Coleman

 

   期間限定で展示が行われている「プラネット・シャーク」だけでなく、ハワイアンホールの常設の展示にも鮫に関するものがあります。ハワイアンホールの吹き抜け2階の高さに展示がされているタイガーシャークのモデルとダブルカヌーです(写真2)。ダブルカヌーはハワイアンがタイガーシャークを捕らえる時に利用していたと言われています。

<写真3:Waʻa Kaulua:ワア カウルア:ダブルカヌー。ハワイアンホールの展示>

  どのように彼らがタイガーシャーク niuhi:ニウヒ)を捕獲していたのかについてStephen L.Desha 著書の “Kamehameha and his warrior Kekūhaupiʻo” に記載があります。それによると古代ハワイでは、niuhiは身分が高い人が食べる魚として一般の人が食べることは禁じられていて、niuhiを捕まえるのは身分が高い人専属の漁師だけに限られ代々受け継がれていたそうです。鮫捕獲の手始めとして、雌豚を捕らえimu(イム)という地中オーブンで蒸し焼きにして豚の肉片を大きなkalo(カロ:タロイモ)の葉で包み水をふりかけた後、更にtī (ティ)の葉で包み他の食べ物とは分けて動物に食べられないように保管します。数日後の早朝、ダブルカヌーのアウトリガー部分にカヌー前方まで突き出す長い木片を設置しtī 包んだ雌豚の肉片をロープで縛り付けます。肉片は既に腐敗し悪臭を放っています。舟の帆を張り夜明け前にダブルカヌーを大海へ漕ぎ出します。ダブルカヌーの間から吊り下げられた雌豚の肉片から油が出て海面に広がりそれがniuhi を惹きつけます。Niuhi はその油の混ざった海水を大変な勢いでガブガブと飲み、餌である雌豚の肉片を目掛けてダブルカヌーに近づいてきます。そこで漁師はあらかじめ輪を作っておいたロープを用意し、船首側と船尾側でそれぞれniuhi の頭部と尻尾に輪を引っ掛けます。海水のがぶ飲みとロープで鮫の動きが鈍くなったその瞬間に急所である鰓(えら)を固いkauila (カウイラ)の木で作られた鋭い武器で突き刺します。

   大きくて動きの鋭い鮫をそのように弱らせてから引き上げる際に使用された釣り針がハワイアンホール2階に展示されています。針は鯨の骨で作られていてそれにolonā (オロナ)という植物の繊維を原料とした大変丈夫なロープが結び付けられています。(写真4参照)

<写真4:Makau Manō:マカウ マノ。ハワイアンホール2階の展示>鮫用の釣り針。針の部分は鯨の骨、ロープ部分はolonā (オロナ)で作られている。ハワイ王朝が転覆した1893年、ハワイ暫定政府からのギフト。

   ハワイアンが神をイメージして制作した偶像をkiʻi(キイ)と言います。Kiʻi は木や石、貝など自然の中に在るいろいろな物を使って作られ神の持つmana(マナ)と呼ばれるスピリチュアルな力が込められていると言われます。写真2の注釈にも記載しているように、タイガーシャークはKū という神のこの世での姿 kino lau)のひとつであり、また家族によっては亡くなった先祖や親族が鮫に姿を変えて現れるʻaumakuaと呼ばれる守護神であると信じていました。Bishop Museum には鮫の神のkiʻi とされる展示が幾つかあります。(写真5、6、7参照)

<写真5:Akua Manō:アクア マノ:鮫の神。ハワイアンホール1階の展示>

ハワイ島、カヴァイハエのPuʻukoholā Heiau (プウコホラ ヘイアウ)にあった鮫の神の木像。Samuel M. Demon コレクションより。

<写真6:Kiʻi pōhaku:キイ ポハク:石像。ハワイアンホール1階の展示>

玄武岩から作られた鮫の神をイメージした石像。1938年、Charles M. Hite からのギフト。ちなみに石像の右上の展示は鮫用釣り針。ハワイアンホール2階の展示の釣り針(写真4)と同じく鯨の骨とolonā (オロナ)のコードで作られている。

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