ミュージアムのひととき

第7回 Maui a me Manaiakalani (マウイとマナイアカラニ)

“E kiʽi ʽoe i ko makuakāne       お父さんのところに取りに行きなさい

Aia i laila ke aho, ka makau       そこに魚釣り用のロープと釣り針があります  

ʽO Manaiakalani o ka makau ia       それはマナイアカラニという釣り針

ʽO ka lou ʽana o nā moku e hui ka moana kahiko”       それは昔の海の島々を合わせて引き上げるもの

Kiʽi ana ka ʽalae nui a Hina       ヒナの大きなオオバンを捕まえて

Ke kaikuahine manu       それは姉妹の鳥

ʽO ka ua ʽahiku o nā ua a Maui       これはマウイの番目の闘争

ʽO ke kupua ʽeu nāna i hoʽolou       このいたずらな半神半人が釣り上げたのは 

Ke ā, ka waha, ka ʽopina o Pimoe       ピモエのあご、くち

ʽO ka iʽa ʽAimoku e halulu ai ka moana       魚の王(ピモエ)の叫びが海に響く

ビショップミュージアムのハワイアンホール階入り口にマウイの伝説の釣り針「マナイアカラニ」のイメージと、ハワイの創世記「クムリポ」から上記の一節の引用が展示されています。同じショーケースの中には現代アーティスト Al Lagunero が描いたマウイの絵も展示されていますが、これは博物館の館内マップの表紙にも使われています(写真1)。絵の中のマウイが左手に抱えているのは餌となったオオバンで、自慢の釣り針「マナイアカラニ」にこの餌が取り付けられているところです。マウイのお話はポリネシアの各地に広く言い伝えられていますが、ハワイでもクムリポの一節以外にいくつかのバージョンのお話があります。

-釣り人 マウイ

William D. Westervelt 著の “Myths and Legends of Hawaiʽi” (ハワイの神話と伝説)の中に “Maui the Fisherman” (釣り人マウイ)というお話があります。それによるとマウイには数人のお兄さんがいて、彼らはマウイよりも釣りが上手で沖に出ては大きな魚を獲っていました。マウイはお兄さん達のように魚を獲ることができなかったので、彼らの笑い者になっていました。そこでマウイはいつかお兄さん達を見返してやると決心しました。

マウイの両親は神の一族として特別な力を持っていましたが、マウイを除く息子たちには与えられていませんでした。マウイだけが不思議な力を授けられていたのです。そしてマウイはお兄さん達には無い「マナイアカラニ」と名付けられた魔法の釣り針を持っていて、特別な時にこの釣り針を使おうと大切にしていました。そしてある時、マウイとお兄さん達は舟に乗り、釣り合戦をするために大海原に漕ぎ出しました。いよいよ「マナイアカラニ」を使う時がやって来ました。マウイは母親のヒナから神聖なオオバンを預かり、それを餌として「マナイアカラニ」に付けて大きな魚ウルア、又は魚の王と言われているピモエが釣れるよう呪文を唱え海に投げ入れました。すると海底が大きく揺れ動き、巨大な波が立ち上がり、舟も大揺れに揺れて海底から途方もない力で魚がロープを引っ張ります。互角の戦いでマウイと魚との力比べは日間続きました。マウイがお兄さん達に「魚を引き上げるから負けないように力いっぱい舟を漕いでくれ」と頼むと間もなく海の中から魚ではなく大地が現れてきました。マウイは「前だけを見て舟を漕いでくれ、後ろを振り向くと獲物が逃げてしまう」とお兄さん達に伝えたにも関わらず、お兄さんの一人が後ろを振り返ってしまったためにロープが緩んで切れてしまいました。すると島々がマウイたちの後ろに横たわりました。

Westervelt によれば、マウイが「マナイアカラニ」を海に投げ込んでから暫く釣り針の先端にくくりつけられた餌のオオバンが海中でもがいていました。マウイの母ヒナがそれに気付き彼女のその神聖なオオバンを救おうとします。ヒナがオオバンの翼をぐいっと引っ張ったところ、オオバンの体は引き裂かれ、魚たちが群がり散り散りになってしまいました。もしこの餌(オオバン)が引き裂かれずひとつの体であったならばマウイが釣り上げた大地は島々ではなくひとつの大陸であり、ハワイ諸島は離れ離れにならなかったということです。

a painting of a man with a horse's bridle.
<写真2>マナイアカラニをイメージして作られたと言われている釣り針でビショップミュージアム初期コレクションのひとつ。‘A‘ali‘iの根と鯨の歯で形作られた釣り針とolonāの繊維を用いたコードで製作されています。(ハワイアンホール1階の展示より)

またマウイの絵を描いた Lagunero によればマウイは島々を釣り上げた後、「マナイアカラニ」を空に放り投げてそれが今でも星座として輝いていると語っています。毎日(特別プログラム開催日を除く)午後1時から行われている日本語のプラネタリウムでもマウイが島々を釣り上げるお話について取り上げています。現在のテクノロジーを利用せずに自然現象だけを頼りにしていた古代ポリネシアの航海術について約15 分の映画が上映されていますが、マウイのお話はその一部です。ハワイの人々の暮らしが古くからの伝説と自然に大きく関わっていたことがわかります。Polynesian Voyaging Society が採用している星を読んでのスターナビゲーションについてはそのあと午後30 分からのプログラム “Wayfinders” で詳しく取り上げています。こちらは英語のみのプログラムですが、プラネタリウムのドームを利用した映画は映像が大変美しく、また現在世界の海を航海中のホクレア号のクルーのインタビューを含み、スターナビゲーションの基本知識についてドームに映し出される星座を見ながら楽しく学ぶことができます。ハワイアンホール階のマウイとマナイアカラニの展示、そしてハワイならではのプラネタリウムプログラムをビショップミュージアムで是非ご堪能下さい。

*参考文献 “Myth and Legends of Hawaiʽi” (クムリポの引用を含む) : 著者 William D. Westervelt / Mutual Publishing 1987 

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