第11 回 Hulia Ano (フリア アノ) 2017-11-30T10:12:10+00:00

ミュージアムのひととき

ミュージアムについてジャンルを問わずご紹介するコーナーです。

11 Hulia ʻAno フリア アノ)

Aya Ueda | Bishop Museum
Aya Ueda | Bishop Museum

写真1a, 1b Hulia ʻAno : Inspired Patterns 開催中のロングギャラリー

   展示会場のロングギャラリーに入るとコンコンコンコン、と木製の道具を利用してkapaカパ:木の繊維を利用して作られたハワイアンが衣類や寝具として用いていた和紙のような手触りの物)を作っている音やpahuパフ:太鼓)を叩く音が聞こえてきます。昔のハワイの人たちはこのようなkapa pahu など生活に必要な物を全て自然の素材から作っていました。家やカヌーなど大木を利用して作る物からipu イプ:瓢箪)で作られた水筒や器kōkō ココ:植物の繊維で作るコードで編まれたネット)、lau hala ラウ ハラ:パンダナスの葉)で作られた帽子やバスケットそして王族の象徴として鳥の羽根で作られたʻahu ʻulaアフウラ:マント)、lei レイ:首飾り)といった手の込んだ装飾品まで様々な物があります。       

   今回の展示のタイトルHulia ʻAnohulia フリア)は探索する、調べる、 ʻano アノ)は種類、本質、性質、形、スタイル、イメージといった意味があります。ハワイの人たちが自然と共存する中で自然を深く探求し、その姿かたちや性質を自分たちの生活に必要な物のデザインやパターンに取り入れていたことがよくわかりますHulia ʻAno : Inspired Patterns は植物標本、海洋生物、動物学を含む自然科学から文化的な装飾品や日用品までビショップミュージアムの各セクションで保管されてきた貴重なコレクションアイテムを通してハワイの人々の暮らし、価値観、芸術性を学ぶことができる展示です。

 

Hulia ʻAno : Inspired Patterns ロングギャラリーで20171016日まで開催

   自然素材を活かした形や装飾のデザインとして用いられていた模様にはそれぞれ名前があり、その言葉の持つ意味が説明文に掲載されています。ハワイ語は一語で幾つか異なった意味をもつ単語が多く、形や模様の名前もいろいろな意味があります

Hulia ʻAno : Inspired Patternsではハワイアンが生活によく取り入れていた形状またはパターン12種類を選びそれぞれのテーマに沿ったコレクションを各ショーケースに展示しています。今回はその中から数点ご紹介します。

* Hoaka ホアカ1三日月、アーチ形(2)新月から数えて二晩目の月の形の名前(3)輝く、明るい(4)影を落とす(5)口などを開ける(6)霊的なスピリット(7)腹部の病(虫垂炎)と様々な意味があります。

Hoaka のショーケースを見ると、この単語の1の意味である三日月やアーチ形を取り入れている物が展示されています。(写真2 参照)目を引くのが赤と黄色の組み合わせが鮮やかなʻahu ʻula に施された三日月のデザインです。王族の装飾品である鳥の羽根のマントʻahu ʻulaについてミュージアムのひととき第8Manu で詳しく取り上げていますので御覧下さい。

2の意味のようにhoakaは月の形の名前でもあります。昔のハワイアンは月を観察し、月の満ち欠けは生活規則に大きく関わり大切であったので一ヶ月に三十、毎晩形の変わる月に名前をつけていました。ハワイアンホール2階にあるムーンカレンダーによると「Hoakaの薄い三日月のアーチ型はまるでボウル(器)のようであるけれどもそれは単なる器ではなく、manaマナ:身体的、スピリチュアル的に強い力)を受け入れる器として見られていた」という解説があります。このショーケースに展示されているʻahu ʻulaを身に着けていた王族は天に昇るhoaka の三日月のように大きな器に合う偉大なmanaを持ったチーフであったかもしれません。

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写真2Hoakaのショーケース展示物の写真。左上がʻahu ʻula右上はmahiole マヒオレ:男性王族用のヘルメット)。左下から右に向かってハワイ固有種koaiʻa (コアイア)の葉の標本、iʻe kukuイエ ククkapaを作る道具で、側面にhoaka の細かい柄が彫刻されているʻakialoa アキアロア:ハワイ固有種のミツスイ鳥、レジン製アクリルペイントの模型kūpeʻe hoʻokalakalaクペエ ホオカラカラ:豚の牙で作られたブレスレット)、niho palaoaニホ パラオア:マッコウクジラの歯で作られ王族のみが着用していたペンダントトップ)。

* Hāʻukeʻukeハウケウケ)(1学術名 Colobocentrotusまたは Heterocentrotus という種類のウニ。食用であり歯は薬としても使用された。2タムシ3kapaを装飾するスタンプのモチーフ、と3つの異なった意味が辞書に掲載されています。このショーケースの中央下部に数種類のウニの標本が展示されていて(写真3参照)ケース内に掲げられている二種類のkapahāʻukeʻuke をモチーフにしたデザインであることがわかります。Kapaへの模様付けはʻohe kāpala オヘ カパラ)と云う竹を細く裂いた先端に模様を彫刻したスタンプを使用していました。(写真4参照)Lāʻau Hawaiʻi ラアウ ハワイ:ハワイの植物)の著者である Isabella Aiona Abbott によれば、kapa の黒い模様付けはkukui ククイ)の実の殻を燃やした炭とkukui の実の油を混ぜて作られた濃厚な液体をインクとしてʻohe kāpalaをそれに浸しkapa に押し付けてデザインを施していたようです。ショーケース向かって右側のkapa 写真4参照)のデザインはカウアイ島がオリジナルと言われています。Hāʻukeʻuke の全体の形と歯がモチーフになったパターンが取り入れられています。(写真4参照)

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写真3Hāʻukeʻuke のショーケースから海洋生物各種の展示。左から② Puhi kāpā Snowflake moray: ウツボ)の標本、③ Hāwaʻe maoli Tripneustes gratilla 種のウニ)の殻、Hāʻukeʻuke ʻulaʻula Heterocentrotus manillatus 種のウニ)の殻、⑤⑥ Hāʻukeʻuke kaupaliColobocentrotus atratus 種のウニ)の殻、 Hāwaʻe poʻohina Pseudoboletia Indiana 種のウニ)の殻、 ʻIna kea Echinometra mathaei 種のウニ)、 Wana Echinothrix calimaris 種のウニ)、海洋生物の後ろは1964年から65年にかけて行われた New York World’s Fair の展示のためにビショップミュージアムが制作したレプリカの kapa

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写真4Hāʻukeʻuke のショーケース内の向かって右側に展示されている物。写真上は kapa (カウアイ島で編み出されたデザイン)、左下は ʻohe kāpala、右下はhuewai pāweheフエヴァイ パヴェヘ:瓢箪で作られている模様付けされた水筒)。 

* Nihonihoニホニホ)ギザギザした、という意味からこのショーケースの中にはギザギザ模様が沢山あります。ショーケースを見て目に入ってくるのが口をぱっくりと開けたサメの顎と歯の標本です。その下にはサメの鋭い歯を利用して作られた武器leiomano (レイオマノ)も展示されています。(写真5参照)ʻIwaʻiwa(イヴァイヴァ:アジアンタムの種類のシダ)とさとうきびの葉で作られた帽子、瓢箪、kapa(写真6参照)makaloaマカロア)というスゲの種類の草を編んで作られたマットと武器から日用品まで様々な物にnihoniho は取り入れられていました。Makaloaのマットは主にNiʻihau(ニイハウ)島で作られていましたが、それについてはハワイアンホール2階のショーケースにも展示と解説があります。その解説の中でビショップミュージアムのCultural Resource 部門のアドバイザーである Marques Hanalei Marzan は「Niʻihauの人々はパターンを創り出す独特なセンスがありました。パターンはマットの下面には見えず、マットの上面に濃い色で目立つ幾何学模様です。彼らは何層にも亘ってデザインができるようにマットを綾織りし、マットの上面に草を重ねて際立つ幾何学模様を創っていました。」と言っています。Makaloaの約1ミリから 2ミリという大変細かい草の網目にnihonihoが施されている美しいマットがこのショーケースの展示で御覧頂けます。(写真7参照)

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写真5:左上 ā niuhi (ア ニウヒ:イタチザメの顎)、左下 leiomano イタチザメの歯で作られた武器)、kūpeʻe niho ʻīlio (クペエ ニホ イリオ:ダンサーが足首に着けてリズムを奏でる犬の歯で作られた楽器)、奥は細かい柄が大きなギザギザを描いているkapa

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写真6:左から順に pāpale ʻie(パパレ イエ:ʻiwaʻiwa の茎とさとうきびの葉で編まれた帽子)、huewai (フエヴァイ:瓢箪から作られた水筒)、ipu pāwehe (イプ パヴェヘ:瓢箪に模様付けした器)

 

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写真7:奥が moena makaloa (モエナ マカロア:makaloa で作られたマット)、その前に掲げられている3種類の kapa(それぞれ異なったデザインと色で nihoniho を描いている)、一番手前はnihoniho柄が表面に施された iʻe kuku (イエ クク:kapaを作るために叩く道具)

 

     これら三つのデザイン以外にも、Peʻaペア:ヒトデ、又は十字の形)と呼ばれるものやIwi puhiイヴィ プヒ:ヘリンボーン柄)、Pewaペヴァ:エビの尻尾の先端や蝶の形)など合計12種類の主な形、デザインがそれぞれのショーケースに展示されています。どんな形やデザインがあるのか、またそれがどんなハワイ語の言葉で表されているのか、どのような生物や植物と関連があるのかをテーマ別に御覧くことができます。

                 

            自然の形を取り入れたデザインで人気があるハワイアンキルトの展示もあります。(写真8参照)何をモチーフにしたデザインであるかそれぞれの作品と植物の標本等を見比べることができます。またタッチパネルで自分の好きなキルトの柄と色を選んでスクリーンに映し出すことができるスペースもあります。 

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写真8:ハワイアンキルトの展示

 

            体験型の展示は他にもあります。Ipu kapaに施されていた伝統的な柄の中から自分の好みの柄や色をタッチパネル上で選択し配置することで自分の好みのデザインのipu kapaをバーチャルで作成することができます。

            昔のハワイの人々は日本のものとよく似たあやとりをしていました。あやとりはハワイ語でhei (ヘイ)と言います。Hei をする時は歌を伴っていました。Hei をする手の動きの映像に併せて現代におけるハワイ語とハワイ文化の第一人者である Mary Kawena Pukui (メリー・カヴェナ・プクイ)がmele (メレ:歌)をチャンティングしている音声をヘッドセットで楽しむことができるコーナーもあります。

 

            Hulia ʻAno : Inspired Patterns” には博物館のコレクションだけでなく、5人の現代アーティストが手掛けたkapapāpale lau hala(パパレ ラウ ハラ:ラウハラの帽子)、ʻahu ʻula、水彩画、ʻupena(ウペナ:ネット)から創作したpāʻū(パウ:スカート)といった作品の展示があります。先祖の伝統を引き継ぎ、現代ハワイアンの視点で彼らが制作した作品も是非ご堪能下さい。

 

            自然と深く結びついた生活をしてきたハワイの人々の知恵や美的感覚をショーケースの中の品々や体験できる展示、現代アーティストの作品を通してお楽しみ下さい。また展示から受けるインスピレーションによって “Hulia ʻAno” 「姿かたち、性質の探求」をご自身で体験してみてはいかがでしょうか? Hulia ʻAno : Inspired Patterns” はビショップミュージアム内ジョセフ・M・ロングギャラリーで20171016日まで行われています。

 

参考資料

Isabella Aiona Abbott Lāʻau Hawaiʻi : Traditional Hawaiian Use of Plants” Bishop Museum Press 1992

Mary Kawena Pukui & Samuel H. Elbert “Hawaiian Dictionary” University of Hawaii Press 1986

ハワイアンホール2Ulana, plating” ショーケースのMarques Hanalei Marzanの引用文

ハワイアンホール2Hoaka” 階のショーケース Shad Kane の引用文

 

 

This page was uploaded on May 4 2017.