ミュージアムのひととき

ミュージアムのひととき 2018-02-18T14:15:35+00:00

ミュージアムについてジャンルを問わずご紹介するコーナーです。

13  Holo Moana (ホロ モアナ) 

 

Aya Ueda | Bishop Museum

“Holo Moana” 開催中のロングギャラリー

    古代ポリネシアの人々は自然現象だけを頼りに遠距離航海をしていました。しかし500年程前から人々はこのような遠距離航海をしなくなったと言われています。そのため自然現象を読んで航海する技術は次第に失われていきました。1973年、その失われつつある技術を取り戻すべくポリネシア航海協会 (Polynesia Voyaging Society :略称 PVS)が発足されました。協会はミクロネシアにこの技術を持った人を見つけて指導を仰ぎ、1976年ポリネシアの伝統航海術だけでハワイからタヒチまでの航海を成功させました。その航海のために作られた双胴船がHōkūle‘a(ホクレア)(I)です。Hōkūle‘a はその後太平洋の他の島々への航海を続け、2014年5月に世界航海に向けてハワイを出発し23カ国、150以上もの港に立ち寄り2017年6月に帰ってきました。このHōkūle‘a の3年に及ぶ世界航海についての展示 “Holo Moana” (ホロ モアナ:大海を往く)がビショップ・ミュージアム内のロングギャラリーで現在行われています。

<星を見よう!:星が教えてくれること>

会場には小さなドーム形天井を持ったミニ・プラネタリウムが設置されていて、中ではハワイアンとして現代ナビゲーターの先駆者であり、PVSの会長でもあるNainoa Thompsonが語る2つのお話が常時上映されています。お話の一つはPVS立ち上げ当時の1970年代、ビショップ・ミュージアムのプラネタリウムで若きNainoaが天体の勉強に励んだ秘話。六分儀やコンパスといった装置を使わず遠距離航海するには太陽や月、星を見てその動きを理解することが大きな手がかりとなります。当時のプラネタリウムスタッフでありNainoaの恩師でもあるWill Kyselkaとの想い出を語っています。そしてお話のもう一つは1990年代、海で覆われたこの地球を守ることを世界航海を通して訴えるべき、と語った宇宙飛行士Lacy Veach との対話について取り上げています。Hōkūle‘aの世界航海のテーマは”Mālama honua” (マラマ ホヌア)地球を大切にしようという意味です。そのテーマ通りHōkūleʻa のクルーメンバーが伝統航海術のみで大海を渡り、環境を守り自然との共存といったメッセージを世界各地の人々に運んでくれました。

星を観測して行くべき方向を見つける天測航法についてはビショップ・ミュージアムのプラネタリム(II)で毎日行われているプログラム、Wayfinders で詳しく取り上げています。午前11時30分(30分のショート・バージョン)と午後1時30分(1時間のロング・バージョン)です。どちらとも英語のみのプログラムですがプラネタリウムドームを利用して映し出される映像は迫力があり、プラネタリウムの星座を見ながら伝統航海術も楽しく学ぶことができます。こちらも是非併せてお楽しみ下さい。

Aya Ueda | Bishop Museum

星のコーナーに設置されているミニ・プラネタリウムが奥、手前には2012年まで実際に使われていたホクレアの船尾がギャラリー中央に展示されています

<風を感じよう!:風の力、風の神様>

会場であるロングギャラリー入り口には「風」に関する展示を行っているコーナーがあります。モーターなどついていないカヌーが大海を航海する際、風は大変大きな動力です。強さや向きによっては助けになる一方、トラブルにもなりうる風。ハワイでは各土地によって吹く方角やコンディションを表す何百もの風の名前がありました。このコーナーに設置されている機械のボタンを押すとそれぞれの方向から風が吹いてきて数あるハワイの風のうち9つの風の名前と説明を英語とハワイ語で聞くことができます。

ハワイに吹く全ての風を司ってその風を瓢箪の中にしまっていた風の神様The Wind Gourd of La‘amaomao(ラアマオマオの風の瓢箪)(III) というお話があります。ハワイ島にKeawenuia‘umi (ケアヴェヌイアウミ)という王様がいた頃、王の重臣の息子Pāka‘a (パカア)、そしてPāka‘aの息子Kūapāka‘a (クアパカア)が試練を積み、先祖からの大切なLaʻamaomaoの風の瓢箪を譲り受けて数々の困難を乗り超えるというお話です。風のコーナーにはこのLa‘amaomao の瓢箪をイメージしたものが展示されています。1883年、Kalākaua(カラカウア)王に寄贈され王様のお気に入りの一品であったと言われています。真鍮に細かい彫刻を施した物をあしらい木製で見事に瓢箪を形作った大変美しいコレクションです。

Aya Ueda | Bishop Museum

風のコーナー床にはそれぞれの方角をハワイ語で示すコンパスがあります

<ポリネシアの伝統航海復活に携わった人々へMahalo!(ありがとう!)>

会場にはポリネシアの伝統航海復活に携わった人々について紹介しているコーナーがあります。まず1973年にPVSを設立した3名、文化人類学者 Ben Finney、歴史家でありアーティストのHerb Kāne、名高いウォーターマンであったTommy Holmes 。彼らの飽くなき探究心、伝統文化復興に対する強い情熱があったからこそ伝統航海術が失われず大きく息を吹き返しました。

この伝統航海の指導にあたったミクロネシア、サタワル島の Pius Mau Piailug についての紹介と彼が用いたダイアグラムとカヌーの模型も展示しています。彼の教えがNainoaに伝わり、そしてNainoaから今の若い世代の人々に受け継がれています。

各寄港地での映像を映し出しているスクリーンの横には今回の世界航海のマップ、そしてこの航海のそれぞれのレグ(航程の一区間)に乗り組んだHōkūle‘a のクルーメンバーをタッチパネルで確認することができます。また寄港地でクルーメンバーを温かく迎えてくれた人々から頂いた貴重なMakana (マカナ:プレゼント)も映像スクリーンを囲むように展示されています。会場となっているロングギャラリーにはビショップ・ミュージアムとPVSの貴重なコレクションアイテムが他にも数多く展示されています。PVS 立ち上げからMālama honua 世界航海に至るまでHōkūle‘aに携わった人々の想いが伝わってくる”Holo Moana” 展はビショップ・ミュージアム内ロングギャラリーで2018年6月24日まで行われています。

<注釈>

(I) Hōkūle‘a はうしかい座で最も明るい恒星アークトゥルスのハワイ語名。Hōkū は星、le‘a は喜びというハワイ語の意味。ハワイではアークトゥルスが天頂を通ることから古くより旅路を導く星として用いられていた 。ポリネシアの伝統航海術で航海するために1975年につくられたカヌーHōkūle‘aはこの星の名前を由来とする。

(II) プラネタリウムのプログラムは入館料とは別に1プログラムお一人様 $2.95

となっております。チケット売り場でご希望のプログラムのチケットを予めお求め下さい。

(III)  “The Wind Gourd of La‘amaomao” 著者 Moses Kuaea Nakuina、翻訳 Esther T. Mookini & Sarah Nākoa 1990年 University of Hawai‘i Press 出版

 

 

 

 

 

 This article was uploaded on February 18, 2018.