ミュージアムについてジャンルを問わずご紹介するコーナーです。

第8回 Manu (マヌ)

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<写真1> ʽIʽiwi (イイヴィ)のハワイ最大の生息地である Hakalau Forest National Wildlife Refuge (ハカラウ国立森林野生動物保護地区)で ʽōhia lehua (オヒア レフア)の木から蜜を吸う ʽiʽiwi 。

写真提供: © Jack Jeffrey Photography  *画像の無断使用を禁止します。

 Manu (マヌ)は鳥を表すハワイ語です。今回のお話は鳥がテーマです。

< ”He Nae Ākea” 「結びつき」:ハワイアンホール 1 階で開催中>

Bishop Museum では2016年3 月19 日に新しい展示が2つ同時に開催されました。そのひとつが “He Nae Ākea” (ヘ ナエ アケア)「結びつき」と題されたハワイの王様 Kalaniʽōpuʽu (カラニオプウ)のʽahu ʽula (アフウラ)とmahiole (マヒオレ)の展示です。ʽAhu ʽula は鳥の羽で作られたマントやケープ、そしてmahiole は男性が被っていた兜です。Mahiole にはʽieʽie (イエイエ)という植物の根で編まれただけの物と、それを土台にして鳥の羽を飾って仕上げられていた物がありました。鳥の羽を使って作られた装飾品は王族だけが身に着けることが許され、彼らの神々しさ、身分の高さ、そして権力を象徴するものでした。そしてこのような素晴らしい装飾品を作ることができる職人や十分な鳥の羽、原材料となる植物がこの王族の優れたリーダーシップの下に豊かに育つことを具体化するものでもありました。鳥の羽の装飾品は文化的、政治的、環境的、そして古代ハワイアンの精神的なバランスが保たれていた当時のハワイを表しています。

Kalaniʽōpuʽu は Kamehameha (カメハメハ) のお父さんである Keōua (ケオウア)の異父兄で、Kamehameha の伯父にあたります。イギリスの探検家 James Cook (ジェームス クック)が1779 年にハワイ島を訪れた当時ハワイ島の最高権力者でした。15 世紀にハワイ島のWaipi ʽo (ワイピオ) という地域で偉大な王様として有名だったLīloa (リロア)の子孫Kalaninuiʽīamamao (カラニヌイイアママオ)がKalaniʽōpuʽu の父親でその又従兄妹であった Kamakaʽīmoku (カマカイモク)が母親です 。Cook の船がハワイ島のKealakekua (ケアラケクア) 湾に停泊した際、Kalaniʽōpuʽu は自分が身に着けていた ʽahu ʽula とmahiole をCook にプレゼントしました。Cook の死後、この ʽahu ʽula とmahiole はイギリスに渡り、国内の数箇所の博物館を転々とした後 St Oswald (セントオズワルド) 卿の所有となりました。1912 年に彼がニュージーランドの Dominion Museum (ドミニオン ミュージアム) に全てのコレクションを寄贈したことから ʽahu ʽula とmahiole もそちらに保管され、その博物館はその後 Te Papa Tongarewa (テ パパ トンガレヴァ)と名前を変えました。2013 年からBishop Museum とTe Papa Tongarewa 、OHA (The Office of Hawaiian Affairs: ネイティブハワイアンの諸問題に対応する専門独立機関)がKalaniʽōpuʽu の ʽahu ʽula とmahiole の里帰りについて協議を重ね2016 年の今年、237 年ぶりに ʽahu ʽula とmahiole が揃ってハワイに戻ることが実現して今回の展示となりました。 Te Papa Tongarewa から短くても 10 年の貸し出しで Bishop Museum がお預かりしています。

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<写真2> Kalaniʽōpuʽu のʽAhu ʽula はolonā (オロナ)という植物の繊維からコードを作り、それを細かい結び目でネット状にしたもの(ハワイ語でnae 、今回の展示のタイトルの一語でもあります)を土台にしてそこに鳥の羽を束にしたハワイ語でʽuo (ウオ)といわれるものを結びつけて作られました。ʽIʽiwi ( イイヴィ:ハワイ固有種のベニハワイミツスイ)の赤い羽と、ʽōʽō(オオ:ハワイ固有種のハワイミツスイ)の黄色い羽で表面に模様がデザインされています。写真提供:ニュージーランドの博物館Te Papa Tongarewa (テ パパ トンガレヴァ) *画像の無断使用を禁止します。   

人類学者で、Bishop Museum の館長でもあった Te Rangi Hiroa(テ ランギ ヒロア)によれば、ʽahu ʽula ʽahu はハワイ語で衣服、ʽula は赤を意味します。ポリネシアでは一般的に赤は身分が高い人と神の象徴でした。ニュージーランドでは最も貴重だったのが全て赤い羽で作られた “kahukura” (カフクラ)、これはハワイのʽahu ʽula と同意義のマオリ語です。この言葉からもわかるように、ハワイでも始めは赤が高貴な色とされていたと思われますが、後に黄色い羽を採取するのに困難を極めたことから赤に替わって黄色が権力を表す色となったようです。衣服の主要な色はともかく、ʽahu ʽula という言葉はそのまま残りました。(Te Rangi Hiroa 著の“Arts and Crafts of Hawaiʽi” より)

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<写真3> Kalaniʽōpuʽu mahiole ʽieʽie を細く裂いた支根を編み合わせて形作った土台からできています。Olonā という植物から作られた nae(ネット)でその土台が覆われています。そのネットに羽が結び付けられますが、兜の両サイドは ʽiʽiwi の赤い羽、モヒカン型となっている兜のトップの部分にだけʽōʽōの黄色い羽が飾られています。写真提供:ニュージーランドの博物館Te Papa Tongarewa (テ パパ トンガレヴァ) *画像の無断使用を禁止します。

今回の展示 ”He Nae Ākea”「結びつき」はKalaniʽōpuʽu とハワイの大地そして人々との結びつき、ハワイの人々と文化の結びつき、二世紀以上に亘りʽahu ʽula mahiole を守ってきた人々の結びつき、それからこの歴史的、文化的に大変貴重なʽahu ʽula mahiole 237年ぶりの里帰りに関わった Te Papa Tongarewa OHABishop Museum といろいろな繋がりによって実現されたものです。是非この機会に Kalaniʽōpuʽu ʽahu ʽula mahiole を御覧下さい。

”Lele O Nā Manu” 「ハワイの森の鳥たち」:ロングギャラリーで731日まで開催>

              319日から “He Nae Ākea” 「結びつき」と同時に開催されたもうひとつの展示が  “Lele O Nā Manu” (レレ オ ナ マヌ)「ハワイの森の鳥たち」です。この展示では豊かな自然が育んだハワイの森林の鳥の歴史、ハワイの伝統文化における優れた鳥の特徴、生息地である森林の健全さとの関係や、急を要する鳥の保護の必要性について見ることができます。

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“Lele O Nā Manu” 「ハワイの森の鳥たち」展開催中のビショップミュージアムのロングギャラリー

“Lele O Nā Manu” 「ハワイの森の鳥たち」の展示会場であるジョセフ・M・ロングギャラリーにはハワイの森林に生息した鳥のコレクションが多く展示され、さえずりが響きます。コレクションの中には既に絶滅している鳥も数多く含まれ、現在の森では見ることのできないその姿は大変貴重です。ネイティブの鳥たちはほとんどの種類にハワイ語の名前がつけられています。いくつかの種類は ʽAumākua (アウマクア)と呼ばれる先祖が亡くなった後で子孫を守る神となりこの世で現れる時の姿と考えられていたものもあります。

ポリネシア人がハワイにやって来る前には110種類にも及ぶハワイ固有の鳥がこの島々に生息していたと言われていますが、現在ではその数が48種類にまで激減してしまいました。今回の展示では鳥の生存を脅かす原因についても紹介されています。鳥と自然に関する背景や現状を伝え、文化的にもハワイの生態系にもかけがえの無い鳥が絶滅してしまう前に残された種類の鳥たちを守るための行動を人々に呼びかけています。

 ハワイアンの人々は様々な用途によって鳥を使い分けていました。例えばʽelepaio (エレパイオ)という鳥は虫が巣を作って幹の中が腐ってしまった木をつついて虫を獲るため、その木がカヌーを作るのに適さない材木であることを教えてくれる神様でした。また ʽōʽō mamo は黒い体の一部にほんの数枚だけ黄色い羽を持つ鳥、ʽiʽiwi は王族の装飾品を作るために最適な赤い羽を持つ鳥でしたからそれらの羽を税金として物納していたハワイではこのような鳥たちは非常に価値が高いものでした。絶滅前のʽōʽōmamo、そして現存する ʽiʽiwi の剥製も今回展示されています。

 今回の展示では体験型のものが4つあります。1つ目はʽelepaio の一生をすごろくのようなゲームを通して学ぶことができるコーナー、2つ目はスクリーンに映る鳥がハワイ原産か外来種かボタンを押して選ぶマシン、3つ目はスクリーンに映る鳥が生存種か絶滅種かボタンを押して選ぶマシン、そして4つ目は数種類の中から一種類の鳥を選びその鳴き声を真似て録音すると3段階で評価してくれるというマシンです。大人からお子様まで楽しみながらハワイの鳥の生態について学ぶことができる展示です。

”He Nae Ākea”「結びつき」展と合わせてハワイの自然と文化に欠かせない Manu(鳥)に関する“Lele O Nā Manu” 「ハワイの森の鳥たち」展を是非お楽しみ下さい。

 

*参考文献 “Arts and Crafts of Hawaiʽi”  :著者 Te Rangi Hiroa / Bishop Museum Press  1957

This page was last modified on 8 May 2016.